ホワイトペーパー

Bluetoothを活用したIoT環境の構築

長距離通信と複数デバイス同時接続を実現するBluetooth ルーター

IoTシステムで注目を集めるBluetooth

 IoTセンサーデバイスのデータを収集するための通信方式には、数多くの無線通信方式が存在しています。低消費電力かつ長距離通信が特徴の通信方式であるLPWA(Low Power Wide Area)には「Sigfox」「LoRaWAN」「ELTRES」「RPMA」などの独自規格が乱立し、移動体通信(携帯電話)規格から派生した「NB-IoT」「LTE-M」、Wi-Fiから派生した「Wi-SUN」「Wi-Fi HaLow」のように国際標準規格をベースにした通信方式も使われています。そうした無線通信方式のなかでも、最近とくに注目を集めるのが「Bluetooth」です。
 BluetoothはWPAN(Wireless Personal Area Network)技術の一つとして、1999年7月に策定された近距離無線通信の国際標準規格です。登場からおよそ20年の間に広く普及し、現在はモバイルPC、スマートフォン、タブレット、カーナビゲーションシステムなどに標準機能として搭載されています。対応デバイスの種類が豊富で低廉な価格で市販されていることも大きな特長で、キーボード、マウス、ゲームコントローラといった入力デバイスやスピーカー、イヤホン、小型プリンタといった出力デバイス、医療機器などの産業用デバイスとしてはRFIDタグリーダー、バーコードリーダー、ウェアラブル端末など、幅広いシーンですでに多くのデバイスが存在しています。2009年12月に公開されたバージョン4.0以降では、大幅な低消費電力を実現した「Bluetooth Low Energy(BLE)」という規格が追加されました。2016年12月に公開されたバージョンの5.0では、転送速度(データレート)が最大2Mbps、最大400メートルの長距離通信(転送速度125kbpsの場合)がサポートされています。

Bluetoothの課題を解決した専用ゲートウェイ

対応デバイスの種類が豊富、かつ低消費電力で長距離通信が可能になったBluetoothは、IoTシステムのセンサーデータを収集するための無線通信方式として注目されるようになりました。ただし、大量のセンサーデバイスを設置するIoTシステムに採用するのは難しいという課題も残されていました。その理由は、センサーデバイスのデータを外部ネットワークへ送信するための中継器の役割を果たすゲートウェイ装置にあります。
 Bluetoothデバイスを使ったIoTシステムのゲートウェイ装置には、汎用のLinuxコンピューターを用いることが一般的です。場合によっては、スマートフォンやタブレットをゲートウェイとして利用することもあります。しかし、これらはIoTシステムを想定したBluetooth専用のゲートウェイ装置として作られているわけではないので、デバイスとの接続可能台数、および大量のデバイスとゲートウェイの管理に課題があります。また、過酷な環境の工場や倉庫、屋外に設置することも困難です。そのため、Bluetoothの注目度は高いものの、IoTシステムで広く普及するまでには至りませんでした。
 こうした課題を解決するために開発されたのが、Bluetooth専用ゲートウェイ装置(Bluetoothルーター)です。