ミリ波レーダーの原理・特徴

エスタカヤ電子工業ではテキサス・インスツルメンツ(TI)社のミリ波レーダーICをベースとしたレーダーモジュールを提供しています。
ミリ波レーダーの活用分野は様々です。ここではミリ波レーダーの原理や特徴について解説します。

ミリ波センサーの利用用途

特徴

対象(人、物、車、etc.)までの距離、速度、角度を高精度で計測
逆光、暗闇、煙、霧、雨、温度など外部環境の影響を受けない
プラスチックを透過するので筐体の内側に組込め、過酷な環境で使用可能
信号発生器、送信、受信、信号処理が1チップに統合され、小型、低消費電力、低価格
測定範囲が広い(FOV=120°)

利用用途

占有検出・人感知・ジェスチャー認識・心拍/呼吸計測
防犯カメラの機能拡張・交通量モニタリング
ドローン/ロボット/AGV等の衝突防止・速度検出・着陸アシスト
高精度液面検出・振動モニタリング
自動車:緊急自動ブレーキ・アダプティブ・クルーズ・コントロール・レーンチェンジアシスト

ミリ波レーダとは

ミリ波は、波長が1mm から10mm で、周波数が30GHz から300GHzの電磁波で、光に近い性質を持ち、直進性が非常に強く、レーダー、イメージング、通信、電波天文等に利用されています。

車載、産業用で利用されるミリ波レーダーの周波数には以下があります。

周波数範囲:日本 帯域幅 Note
24.05-24.25GHz 200MHz 以前から広く利用されている周波数帯
76-77GHz 1GHz 車載フロント長距離レーダ
77-81GHz 4GHz 車載バック/サイドモニタ 短距離レーダ
57-64GHz 7GHz 2020年1月に法改正が施行され、今後の利用増加が見込まれる

ミリ波レーダーの検出方式

検出方式には、FMCW、パルス、CWドップラー、2周波CW、パルス圧縮等の方式がありますが、車載用と車載から派生したレーダー用ICの大半はFMCW方式を採用しています。FMCW方式は、船舶、航空で使用されるパルスレーダに比べ、送信電力や受信回路周波数が低く、信号処理量が少ないことから、回路が簡単でワンチップ化・低コスト化し易いという利点があります。ここではTIのミリ波ICに採用されているFMCW方式について解説します。

FMCW方式では、時間の経過とともに直線的に周波数が増加する連続正弦波を使用します。この信号をChirp(チャープ)と呼びます。

79GHz帯レーダーを例に、Chirpを周波数vs 時間で表すと右図のようになります。この例では、77GHzから81GHzの4GHzの周波数帯域幅を40usでスイープし、Chirpの傾きは100MHz/usとなります。

FMCW方式の動作原理

1.シンセサイザがチャープ信号(送信波)を生成
2.チャープ信号をTxアンテナから送信
3.物体に反射されたチャープ信号をRxアンテナで受信
4.Tx信号とRx信号をミキサーで合成し、IF信号(数MHz)を生成
5.IF信号をADコンバータでサンプリング
6.プロセッサでFFT等の信号処理を行い、物体の距離、速度、角度情報を生成

物体に反射して受信されたチャープは、送信チャープに対して、距離に比例した遅れが生じます。送信と受信の差分のIF周波数は、近くの物体は低い周波数、遠くの物体は高い周波数となり、IF信号をFFTすると時間領域から周波数領域に変換され(上図)、周波数に応じた距離情報が得られます。これをRange FFT (1D FFT)と呼びます。複数繰返すチャープのRange FFT出力をFFTすることで、速度情報が得られます。これをDoppler FFT(2D FFT)と呼びます。複数アンテナ間のRange Doppler FFT (2D FFT)の結果をFFTすることで角度情報が得られます。これを到来角推定(3D FFT)と呼びます。

FMCW方式における距離精度とレーダー帯域幅

79GHzの利点の1つに最大で4GHz(77~81GHz)と広い帯域幅を利用できることにあります。距離分解能(ほぼ等距離にある複数の物体を分離する能力)をDres、光速をc、帯域幅をBとすると「Dres = c/2B」となり、帯域幅が200MHzの24GHzレーダーが距離分解能が75cmに対して79GHz帯では3.75cmの距離分解能を得ることが可能です。

帯域幅 距離分解能
4GHz 3.75cm
500MHz 30cm
200MHz 75cm

例えば、レーダーから見て互いに50cm離れた距離にある2つの物体は、24GHzレーダーでは1つの物体と認識されることになります。
※注意:距離分解能と距離精度は異なります。4GHz帯域のFMCWレーダーの距離精度は1mm以下となります。

技術基準適合証明について

ミリ波センサーで利用される高周波帯は電波法で規制されています。日本で販売されている半導体メーカーのミリ波レーダーセンサーの評価ボードの多くは日本での技術適合証明を取得していません。そのため、このようなメーカー製の評価ボードの利用は制限されます。エスタカヤ電子工業では技術適合証明取得済みの評価ボードを製造・販売しています。また、ソフトウェア、ハードウェアのカスタマイズにも対応しております。ミリ波レーダーの活用をお考えのお客様は当社までお問い合わせください。

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